【図解】電子親和力とは、陰イオンにするときに放出されるエネルギーのことです。なぜ電子親和力はハロゲンが最大で希ガスが最小となるかについても具体的かつ丁寧に解説します。解説担当は、灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師です。
目次
電子親和力とは
「原子が電子を一つ得て一価の陰イオンになるときに放出されるエネルギー」です。
出典:http://chemwiki.ucdavis.edu/
そしてその大きさは、希ガスを除き、周期表の「右上」が最大であり、「左下」が最小です。
「電子の引きつけ度合い」と理解しておくと、その理由がわかります。
それでは、細かく見ていきましょう。
電子親和力は電子の引きつけ度合い
電子親和力とは「原子が電子を一つ得て一価の陰イオンになるときに放出されるエネルギー」です。つまり、原子に電子をくっつけるときの話です。
エネルギー放出のイメージが掴みにくいので、まずは例え話から始めます。
例えば、隕石が星の引力(重力)に引きつけられて衝突すると、爆風や熱・光・音などが発生します。この熱や光や爆風などがエネルギーの一種です。
今度は隕石を電子、星を原子に置き換えて考えてみます。
原子核には陽子(+)が含まれているため、引力(静電気力)により電子(-)は原子核に引き付けられて、最外殻に飛び込んだときに隕石の場合と同じようにエネルギーが発生します。この発生するエネルギーが電子親和力です。
では次に例えに戻りますが、星が隕石を引き寄せる力が強いほど、隕石はより速く激しく星に衝突し、発生するエネルギー(爆風や熱・光・音など)はより大きくなります。
これは電子親和力に関しても同じことが言えます。
つまり、原子核(+)が電子を引き付ける引力が強いほど、陰イオンになるときにはたくさんのエネルギーが放出されるということになります。
このため、電子親和力が大きい原子は、イオン化エネルギーと同様で電子を引き付ける引力が強いのです。
電子親和力は同一周期ではハロゲンが最大
イオン化エネルギーと同じく、電子を引きつける引力が強いほど電子親和力が大きいのにも関わらず、以下のように電子親和力の大きさは全体的にボコボコしています。(イオン化エネルギーのように右上が大きいとは言えません。)この原因は、電子同士の相互作用が影響しており、高校レベルでは解説不可能です。
そのため、同一周期における電子親和力の最大が何かを押さえておけば大丈夫です。
出典:http://chemwiki.ucdavis.edu/
同一周期(横)についての考察
例えば、周期表の第2周期(Li~Ne)をもとに説明していきます。
第2周期の最外殻はすべてL殻であり、真ん中にある原子核からの距離がどの原子でも同じです。※本当は違います。詳しくは原子半径を後々執筆しますので、そちらを参照。
では何が違うのかというと、真ん中の原子核内にある陽子(+)の個数が違います。
真ん中の原子核内にある陽子(+)が多いほど、回りの電子を引き付けやすいはずです。つまり、周期表の右側の方が原子番号が大きく、陽子数が多いため、電子を引き付ける強さが強くなります。そのため、右側の方が電子が引き寄せられやすく大きなエネルギーが発生します。
よって、周期表の右側の方が電子親和力が大きいのです。
しかしイオン化エネルギーと違い、電子親和力は一番右の希ガスが最大とはなりません。
その理由を解説していきます。
電子親和力はハロゲンが最大で希ガスがむしろ最小となる理由
上記の説明から、周期表の右側にあるハロゲンは電子を受け取りやすいです。受け取ると希ガスと同じ電子配置となるため、閉殻またはオクテットとなり安定的になるので大きなエネルギーを発生します。
これに対し、希ガスはすで閉殻またはオクテットで非常に安定的なので、外部の電子を引き付ける力はほとんどありません。そのため、希ガスの電子親和力はほぼ0やむしろマイナスです。
電子親和力のグラフ
結論としては、同一周期において
ハロゲンは電子親和力が最大
希ガスは電子親和力が極めて小さい
ということです。
以下が電子親和力の大きさに関するグラフです。
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%8C%96%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC
イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度の共通点と違いを参照してください。
イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度・原子半径・イオン半径について
根本的な考え方が同じである「イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度・原子半径・イオン半径」についての他記事は以下を参照ください。
まとめ
灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師より電子親和力の定義と大小関係の解説を行いました。しっかりと覚えておきましょう。