電離度とは電離する(イオンに分かれる)割合のことです。この意味と、酸・塩基の強弱にどのような関係性があり、強酸・強塩基の性質や弱酸・弱塩基の性質の違いについてわかりやすく解説します。解説担当は、灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師です。
酸・塩基の強弱
水溶液中のH+の濃度が大きいほど酸性は強く,OH-の濃度が大きいほど(H+の濃度が小さいほど)塩基性は強くなります。
では電離度とは何でしょうか。
電離度
電離度とは、溶液中で溶質が電離する割合のことです。
$$電離度α = \frac{電離している酸・塩基の物質量[mоl]}{溶解している酸・塩基の物質量[mоl]} (0 < α ≦1) $$
と定義します。
例えば、硫化水素 H2Sの電離度が0.2で、100個あったとすると、
H2S100個のうち、0.2の割合、つまり20個電離します。
電離度0.2ということは、80個(100×0.8)が電離せず H2Sのまま残ります。
そして、電離後は、 H2S ⇄ 2H+ + S2- となるため、
H+は20×2 = 40個、S2-は20個となります。
これをモル濃度(溶液1Lあたりの溶質のモル)で考えるのが基本です。
強酸・強塩基
ほぼ全てが電離する、つまり電離度α≒1の酸・塩基のことを強酸・強塩基といいます。
強酸や強塩基は完全電離するため、反応式では「→」を使って表します。これは、右向きしか起こらない反応ということを表します。
HCl → H+ + Cl-
左の分子HClのような結合状態が不安定で、右のイオンの状態Cl-が安定的なので電離してH+ を大量に放出できるため、強酸である、ということです。
高校化学で覚えるべき強酸・強塩基
強酸 | 硫酸(H2SO4),硝酸(HNO3), 塩酸(HCl),臭化水素酸(HBr),ヨウ化水素酸(HI) |
強塩基 | 水酸化ナトリウム(NaOH),水酸化カリウム(KOH),水酸化カルシウム(Ca(OH)2),水酸化バリウム(Ba(OH)2) |
強酸・強塩基を必ず覚え、それ以外は弱酸・弱塩基と覚えましょう。
強酸は、硫酸と硝酸とハロゲンのフッ化水素酸以外と覚えます。
強塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物のみと覚えましょう。
弱酸・弱塩基
電離度が1に比べて十分小さい、一部しか電離しない酸・塩基のことを弱酸・弱塩基といいます。
弱酸や弱塩基は、電離度が小さく、イオンに別れにくく、例えイオンになっても再びくっつきやすいということです。そのため、イオン同士がくっつく方法の反応、つまり左向きの反応もあり得るため、「⇄」を使って表されます。
CH3COOH ⇄ CH3COO- + H+
左の分子CH3COOHのような結合状態が安定的で、右のイオンの状態 CH3COO-が不安定なのでほとんど電離せずH+ をほとんど放出しないため、弱酸である、ということです。
高校化学で頻出の弱酸・弱塩基
弱酸 | 酢酸(CH3COOH)、フッ化水素(HF)、
炭酸(H2CO3)、硫化水素(H2S)、シュウ酸(H2C2O4または(COOH)2)、 リン酸(H3PO4) |
弱塩基 | アンモニア(NH3)、
水酸化銅(Ⅱ)(Cu(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Ⅱ)(Fe(OH)2)、 水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化鉄(Ⅲ)(Fe(OH)3) |
まとめ
灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師より電離度と酸・塩基の強弱について解説を行いました。しっかりと覚えておきましょう。