【図解】共有結合の結晶であり同素体であるダイヤモンドと黒鉛は、その構造の違いから機械的性質、電気伝導性が全く異なります。その構造の違いが生じる原因から詳しく解説します。解説担当は、灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師です。
C(炭素)の同素体かつ共有結合の結晶(共有結晶)
ダイヤモンドも黒鉛もともにC(炭素)の同素体であり、どちらも共有結合が際限なく結合し続けて形成された共有結合の結晶(共有結晶)です。
※同素体を忘れた人は同素体と同位体の違いと例(硫黄・炭素・酸素・リン)を参照してください。
※共有結合の仕組みを忘れた人は共有結合とは?二酸化炭素などの例を図でわかりやすく解説を参照してください。
ダイヤモンドと黒鉛の構造
同素体であるダイヤモンドと黒鉛は構造が異なります。
それではなぜこのような違いが生じるのでしょうか。
炭素Cは原子番号が6番なのでK殻に2個の電子が入り、L殻(最外殻)に4個の電子をもっています。
そして原子状態では4個の電子すべてが不対電子なので普通に考えると、以下の図のように隣り合う炭素原子と4本の共有結合をするはずです。
この点がダイヤモンドと黒鉛では違います。
ダイヤモンドの場合、炭素Cの価電子4個をすべて結合に使います。
このため、4組の共有電子対はマイナスの性質をもった電子なので、クーロン力(静電気力)により反発しており、空間的に最も遠ざかる位置に配置されます。4本の結合すべてを最大限に遠ざけると以下の図のように正四面体の頂点の方向に配置されることになります。
そのため、ダイヤモンドは立体的で巨大な構造を形成しています。
これに対し、黒鉛の場合、炭素Cの価電子4個のうち3個を結合に使います。
このため、3組の共有電子対はマイナスの性質をもった電子なので、クーロン力(静電気力)により反発しており、空間的に最も遠ざかる位置に配置されます。3本の結合すべてを最大限に遠ざけると以下の図のように正三角形の頂点の方向に配置されることになります。
そのため、黒鉛は網目状の平面構造を作り、その平面同士が非常に弱い力であるファンデルワールス力によって結合し形成されています。
ダイヤモンドと黒鉛の機械的性質
上の構造で分かる通り、ダイヤモンドは立体的に共有結合しており、結合自体が非常に強いため極めて硬いです。
それに対し、黒鉛は非常に強い共有結合で平面状につながっており、平面どうしは非常に弱いファンデルワールス力でつながっているため、薄くはがれやすくやわらかいという性質を持っています。
鉛筆で文字が書ける理由は、鉛筆の芯と紙との摩擦でファンデルワールス力が切れて、黒鉛の層が薄くはがれ、紙にひっつくからです。
ダイヤモンドと黒鉛の電気伝導性
ダイヤモンドは価電子4個すべてを結合に使っているため、電気を導かず、電気伝導性はありません。
これに対し、黒鉛は価電子4個のうち3個を結合に使い、残り1個の電子は結晶中を自由に移動できるため、金属の自由電子のときのように黒鉛は電気をよく導き、電気伝導性があります。
ダイヤモンドと黒鉛の性質まとめ
ダイヤモンド | 黒鉛 | |
結合に使われる電子の数 | 4個全て | 3個 |
結合の仕方 | 正四面体の頂点の方向 | 正三角形の頂点の方向 |
構造 | 立体的 | 平面構造で層状 |
融点・沸点 | 共有結合が非常に強いので非常に高い | |
機械的性質 | 極めて硬い | 薄くはがれやすくやわらかい |
電導性 | なし | あり |
まとめ
灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師より、共有結合の結晶であり同素体であるダイヤモンドと黒鉛の違いの原因について詳しく解説しました。しっかりと覚えておきましょう。