【例文付き】漢文とはもともと「古典中国語(白文)」という外国語です。つまり“文法体系”(=語順)が日本語と違います。このため、語順を変えて日本人が読めるようにするために「返り点」を付けます。本記事では、返り点「上下点・甲乙丙丁・天地」の付け方のルールに加え、構文・品詞レベルで完全理解できるよう大手予備校一流プロ講師が徹底解説します。
目次
そもそも漢文の「返り点」とは
そもそも返り点とは
「漢文を並び替えて、日本語のように読むための記号」です。
漢文とはもともと「古典中国語」という外国語なので、中国語の文法で書かれています。
昔の日本人は、中国語の語順を変えて日本語のように読む工夫を施しました。
それが、「返り点」です。
漢文の「返り点」レ点、一二点、上下点などの基本ルール
訓読の基本ルール(書き下し文への直し方)は、
- 上から順番に読む
- 返り点がついた漢字はいったん飛ばして進み、「レ点・一点・上点」があったら戻って読む
です。
この前提のもと、それぞれの返り点のルールを確認しましょう。
返り点「上下点・甲乙丙丁など」の付け方と読み方、いつ付けるべきなのかを文法に基づいて解説
上下点・甲乙丙丁などが必要な時はずばり、下記のタイミングです。
- SVO構造のとき※一二点をまたぐ必要があるとき
- 再読文字→ 【完全版】入試で必要な再読文字10個の一覧まとめ
- 返読文字→ 【完全版】入試で必要な5種類の返読文字一覧まとめ
本記事では、1.について解説します。
漢文のSVO構造での返り点「上下点・甲乙丙丁など」の付け方と読み方(書き下し文のルール)
「一二点」をまたいで返る必要があるときに使います。
一二点についての詳細はコチラ⇒返り点「一二点」はこれで完璧
たとえば、「私は鳥を見ている人を知っている。」の場合、
「我」が主語、「知」が述語動詞、「見鳥者」が目的語ですが、「見鳥者」の部分は、「鳥」が「見」の目的語になって、「見鳥」の二字が「者」の修飾語になっています。
ではこの「鳥」が「富士山」になるとどうなるでしょうか。まずは「富士山を見る者」は、
となります。従って、全文は
となります。この場合、述語動詞「知」の目的語は「見富士山者」の五文字なので、「者」から「知」に返る必要があります。
つまり、「一二点」をまたいで返る必要があるため、別の返り点を使う必要があるということです。この場合に「上(中)下」を使います。
したがって、
となります。
このように、(理論上はいくらでも)いわゆる「入れ子構造」を作ることができます。
その時は、
- 一・二・三・四……
- 上(中)下
- 甲・乙・丙・丁
- 天・地・人
の順で使っていくことになります。
極端な例として、
「私は、生魚を食べている猫を狙っている犬を見ている人を知っている。」という文を作ってみましょう。
となるので、全文は、
となります。実際にはこんな悪文はないでしょうが、論理としてはあり得ます。
現実に「天地人」まで使うのは、「上中下」を飛ばして「甲乙丙丁」を使う場合くらいでしょう。(第二段階で「上中下」では返り足りず、「上中下」の次の「四番目までの返り点」まで必要な場合)。
まとめ
力石智弘先生の著書『脳TEC漢文(ドゥクエスト)』より、一二点を抜粋しました。
- SVO構造のとき※一二点をまたぐ必要があるとき
- 再読文字→ 【完全版】入試で必要な再読文字10個の一覧まとめ
- 返読文字→ 【完全版】入試で必要な5種類の返読文字一覧まとめ
センターの白文問題に対応する実力を付けられるよう、根本的に理解しておきましょう。
『脳TEC漢文』著者:力石 智弘先生
河合塾、四谷学院など予備校・学習塾で活躍する現役ベテラン国語講師。京大理学部という理系出身こその論理的な解法と多種多様な知識・経験から繰り出される授業は最高傑作と評される。東大模試の作成や、神戸大学個別試験(国語)の解答速報作成(新聞にて掲載)など多岐にわたり活躍中の実力派講師。