【例文付き】漢文において返読文字とは、日本語と逆の語順になるため、下から返って読まなければならない漢字のことです。返読文字は、構文・語順を理解し、センター試験頻出の白文問題に対応するためには重要です。本記事では、「与」の例文と意味、読み方、働き、覚え方について、大手予備校一流プロ講師が構文レベルから詳しく解説します。
返読文字の入試頻出文字一覧
漢文(中国の古典語)はもともと外国語なので、日本語とはまったく異なる構文です。特に、動詞(他動詞)と目的語の関係、助動詞と動詞(などの自立語)との関係は日本語と正反対であり、そのため返読する必要がありました。
返読文字とは、そのような「他動詞」や「助動詞」以外に、日本語と逆の語順になる漢字のことです。
入試で頻出となる返読文字は以下です。
以下では覚えるためのイメージ付け、例文を解説していきます。
今回は、④ 「与」
の解説をしていきます。
複数の人間が共同で何かをすることを表す返読文字 …「与」
「与」という字はもともと、複数の人間が共同で何かをすることを表す字であり、動詞として「くみス(仲間である・味方である)」、「あづカル(関わる、関係する)」、「あたフ(与える)」の読みがあります。
この字が前置詞・接続詞的に使われる場合はともに行動する相手を表したり、名詞をつないで塊にする働きになります。
「善」は「親善」つまり「仲がいい」という意味です。この文には二通りの解釈が可能です。
ⓐ 私はあなたと仲がよい。 述語になる形容詞「善」に対して「我」が主語、「与汝」が修飾語。
ⓑ 私とあなたは仲がよい。 述語になる形容詞「善」に対して「我与汝」が主語。
この文の場合はどちらの解釈にしても文の意味はほとんど変わりません。従って訓点、書き下し文は次の両者が可能です。
ⓑ ⓐ
ⓑの文では、「我と汝(は)善し。」と読んで返り点を付けない、という解釈も良さそうに感じられますが、ⓐの場合に「与」を返読している以上、場合によって返読しない、というのは面倒なので、常に返読することにしています。
次のような場合はどうでしょうか。
この場合いわゆる主語がないため、「交」に対して「与朋友」が修飾しているという関係で取るしかありません。
また、この語が単独で用いられる時は、「〜と」という読み方ができないので、「ともニ」という副詞(連用修飾語)として読みます。
「無」が述語動詞、「与可飲者」が主語です。「与可飲」が「者」に係る修飾語となっています。
まとめ
力石智弘先生の著書『脳TEC漢文(ドゥクエスト)』より、返読文字一覧と「与」の例文を抜粋しました。
センターの白文問題に対応する実力を付けられるよう、根本的に理解しておきましょう。
『脳TEC漢文』著者:力石 智弘先生
河合塾、四谷学院など予備校・学習塾で活躍する現役ベテラン国語講師。京大理学部という理系出身こその論理的な解法と多種多様な知識・経験から繰り出される授業は最高傑作と評される。東大模試の作成や、神戸大学個別試験(国語)の解答速報作成(新聞にて掲載)など多岐にわたり活躍中の実力派講師。