酸・塩基の価数とは何なのか、覚え方、多段階電離との関連性、間違いやすいアンモニアと酢酸の価数の注意点、入試必出の価数の一覧についてわかりやすく解説します。解説担当は、灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師です。
酸・塩基の価数
酸の価数とは、酸1分子が出しうる水素イオンH+の数のことであり、塩基の価数とは塩基1化学式が出しうる水酸化物イオンOH-の数または受けとることができる水素イオンH+の数のことです。
価数の覚え方としては、酸・塩基の化学式およびイオンの形を覚えることが最もベストです。HClは化学式中にHを1つもっているので1価の酸、Ca(OH)2は化学式中に2つのOHをもっているので2価の塩基となります。
ただし、アンモニアNH3はH+を1つだけ受け取りNH4+となるため価数は1です。3ではありません。
酸・塩基の価数の一覧
酸の価数一覧表
酸一覧 | ||
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強酸 | 価数 | 弱酸 |
HCl(塩酸)→ H+ + Cl-
HBr(臭化水素酸)→ H+ + Br- HI(ヨウ化水素酸)→ H+ + I- HNO3(硝酸)→ H+ + NO3- |
1価 | HF(フッ化水素酸)→ H+ + F-
CH3COOH(酢酸)→ H+ + CH3COO- |
H2SO4(硫酸)→ 2H+ + SO42- | 2価 | H2CO3(炭酸)→ 2H+ + CO32-
H2S(硫化水素)→ 2H+ + S2- H2C2O4(シュウ酸)→ 2H+ + C2O42- または(COOH)2(シュウ酸)→ 2H+ + (COO)22- |
3価 | H3PO4(リン酸)→ 3H+ + PO43- |
塩基の価数一覧表
塩基一覧 | ||
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強塩基 | 価数 | 弱塩基 |
NaOH(水酸化ナトリウム)→ Na+ + OH- | 1価 | NH3(アンモニア)→ NH4+ + OH- |
Ca(OH)2(水酸化カルシウム)→ Ca2+ + 2OH- | 2価 | Cu(OH)2(水酸化銅)→ Cu2+ + 2OH-
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)→ Mg2+ + 2OH- Zn(OH)2(水酸化亜鉛)→ Zn2+ + 2OH- |
3価 | Al(OH)3(水酸化アルミニウム)→ Al3+ + 3OH-
Fe(OH)3(水酸化鉄)→ Fe3+ + 3OH- |
多段階電離とは
価数が2以上の酸・塩基は、実際には上記のようにいっぺんに電離しているわけではありません。
例えば、硫酸の場合、
H2SO4 ⇄ H+ + HSO4-
HSO4- ⇄ H+ + SO42-
と2段階の電離を経ています。
第1段の電離が最も起こりやすく,第2段,第3段となるにしたがって電離は急激に起こりにくくなります。
その理由は、
H3PO4 ⇄ H+ + H2PO4-
H2PO4- ⇄ H+ + HPO42-
HPO42- ⇄ H+ + PO43-
第1段階、第2段階、第3段階となるにしたがって「-」の価数が増えています。
すると、H+ とH2PO4-の間で働く引力よりも、H+ と HPO42-のほうが、 H+ + PO43-のほうが強いのです。
そのため、第2段階、第3段階となったほうが電離が起こりにくくなります。
まとめ
灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師より酸・塩基の価数について解説を行いました。しっかりと覚えておきましょう。