【例文付き】漢文において返読文字とは、日本語と逆の語順になるため、下から返って読まなければならない漢字のことです。返読文字は、構文・語順を理解し、センター試験頻出の白文問題に対応するためには重要です。本記事では、「所・所以」の例文と意味、読み方、働き、覚え方について、大手予備校一流プロ講師が構文レベルから詳しく解説します。
返読文字の入試頻出文字一覧
漢文(中国の古典語)はもともと外国語なので、日本語とはまったく異なる構文です。特に、動詞(他動詞)と目的語の関係、助動詞と動詞(などの自立語)との関係は日本語と正反対であり、そのため返読する必要がありました。
返読文字とは、そのような「他動詞」や「助動詞」以外に、日本語と逆の語順になる漢字のことです。
入試で頻出となる返読文字は以下です。
以下では覚えるためのイメージ付け、例文を解説していきます。
今回は、⑤ 「所」「所以」
の解説をしていきます。
漢文独特の返読文字 …「所・所以」
「所」という字は漢文独特の字で、日本語に機械的に当てはめることは不可能です。次の例文で考えていきましょう。
「所」という字は、直後に他動詞を伴い、その目的語(対象)を名詞化する働きがあります。つまりこの文では「所好」の二字で「好むもの(何を好んでいるか)」という意味を表しています。「我」はその「所好」の主語ですから「我所好」で「私が好きなもの」、この三字が「書」に対する主語となって、全文の意味は「私が好きなものは書物である。」となります。
訓点の付け方及び書き下し文は
となります。「我」の送り仮名「ガ」は「好」に対する主格を表す格助詞です。「我所好」は名詞節ですから「我」には格助詞が必要であり、「われノ」としてもいいのですが、「我・吾」の場合は「わガ」と読むことが多いです。
次の文も同様に考えましょう。
「吾」が主語、「借」が述語動詞、「汝所持書」が目的語です。「汝所持」は「書」の修飾語であり、「あなたが持っているもの」=「書物」であることを示しています。従って全文の意味は「私はあなたが持っている書物を借りたい。」となります。
「所」の送り仮名「ノ」は「書」に係る連体修飾語であることを示す連体格の格助詞です。また、「借」の送り仮名の「ン」は意志の助動詞「む」です。
「所以」は「ゆゑん」と読み、「理由」「手段」「根拠」などの意味を表す名詞です。これは「以」という前置詞が表す内容を名詞化したもの(そのために……となるもの、それゆえ……になるもの)です。
まとめ
力石智弘先生の著書『脳TEC漢文(ドゥクエスト)』より、返読文字一覧と「所・所以」の例文を抜粋しました。
センターの白文問題に対応する実力を付けられるよう、根本的に理解しておきましょう。
『脳TEC漢文』著者:力石 智弘先生
河合塾、四谷学院など予備校・学習塾で活躍する現役ベテラン国語講師。京大理学部という理系出身こその論理的な解法と多種多様な知識・経験から繰り出される授業は最高傑作と評される。東大模試の作成や、神戸大学個別試験(国語)の解答速報作成(新聞にて掲載)など多岐にわたり活躍中の実力派講師。