酸・塩基の定義の仕方であるアレニウスの定義、ブレンステッドとローリーの定義。その違いと酸・塩基の判断の仕方など解説します。解説担当は、灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師です。
目次
アレニウスの定義
酸とは、水溶液中で水素イオンH+を放出する水素化合物のことです。
塩酸HCl → H+ + Cl-
硫酸H2SO4 → 2H+ + SO42-
生成した水素イオンH+は,水溶液中では水分子と結合してオキソニウムイオンH3O+
として安定に存在しています。
塩基とは、水溶液中で水酸化物イオンOH-を放出する物質のことです。
水酸化ナトリウムNaOH → Na+ + OH-
アンモニア NH3 + H2O → NH4+ + OH-
しかし、アレニウスの定義には欠点がありました。
(ⅰ) 「水溶液中」と限定しているため、水以外を溶媒とする溶液中の場合など酸・塩基の区別ができない。
(ⅱ) ヒドロキシ基-OHをもたないアンモニアは、OH-を放出しているとは言い難く、実質的に塩基性を示すことの十分な説明ができない。
このため、新たにブレンステッドとローリーが酸と塩基の定義を提唱しました。
ブレンステッドとローリーの定義
酸とは水素イオンH+ を与えることのできる物質であり,塩基とは水素イオンH+ を受け取ることのできる物質である。
と定義しました。「水溶液」と限定していないため、上記の欠点の2つが解決されます。アンモニアに関しては具体例をもとに説明していきます。
【例1】塩酸HClと水H2Oの反応について
HCl + H2O → Cl- + H3O+
この反応では、HClがH+を放出して自身はCl-となり、放出されたH+をH2Oが受け取りH3O+になります。そのため、ブレンステッド・ローリーの定義によれば、HClが酸として働き、H2Oが塩基として働いた事になります。
【例2】水H2OとアンモニアNH3の反応について
H2O + NH3 → OH- + NH4+
この反応では、H2OがH+を放出して自身はOH-となり、放出されたH+をNH3が受け取りNH4+になります。そのため、ブレンステッド・ローリーの定義によれば、H2Oが酸として働き、NH3が塩基として働いた事になります。
【例3】水酸化鉄(Ⅲ)Fe(OH)3と水素イオンH+の反応について
さて、それでは
Fe(OH)3 + 3H+ → Fe3+ + 3H2O
の反応だといかがでしょうか。
H+のやりとりには見えないですよね。
こういうときは、以下のように考えましょう。
塩基とは水酸化物イオンOH- を与えることのできる物質であり,酸とは水酸化物イオンOH-を受け取ることのできる物質である。
Fe(OH)3 + 3H+ → Fe3+ + 3H2O
Fe(OH)3がOH-を放出して自身はFe3+となり、放出されたOH-をH+が受け取りH2Oになります。そのため、Fe(OH)3が塩基として働き、H+が酸として働いた事になります。
まとめ
灘・甲陽在籍生100名を超え、東大京大国公立医学部合格者を多数輩出する学習塾「スタディ・コラボ」の化学科講師より酸・塩基の定義の仕方であるアレニウスの定義、ブレンステッドとローリーの定義について解説を行いました。しっかりと覚えておきましょう。