【例文付き】漢文において返読文字とは、日本語と逆の語順になるため、下から返って読まなければならない漢字のことです。返読文字は、構文・語順を理解し、センター試験頻出の白文問題に対応するためには重要です。本記事では、「有・無・多・少」の例文と意味、読み方、働き、覚え方について、大手予備校一流プロ講師が構文レベルから詳しく解説します。
返読文字の入試頻出文字一覧
漢文(中国の古典語)はもともと外国語なので、日本語とはまったく異なる構文です。特に、動詞(他動詞)と目的語の関係、助動詞と動詞(などの自立語)との関係は日本語と正反対であり、そのため返読する必要がありました。
返読文字とは、そのような「他動詞」や「助動詞」以外に、日本語と逆の語順になる漢字のことです。
入試で頻出となる返読文字は以下です。
以下では覚えるためのイメージ付け、例文を解説していきます。
今回は、① 有無を表す表現 …「有」「無」「多」「少」
の解説をしていきます。
有無を表す返読文字 …「有」「無」
「有益」「無人」のように、「有」「無」という漢字は、その後ろに主語が来ます。
つまり普通のSV構造とは異なり、日本語とも語順が異なります。
まずは「有」の例文から。
この文は「有」が述語動詞、その後に続く表現がその主語です。
しかし、「能」だけが主語なのか、それとももっと長いのかは形の上では分かりません。
文の意味(あるいは前後関係)から解釈することになります。
この文の場合は、「能力があって漢文を読む人。」もしくは「漢文を読むことのできる人がいる。」のいずれかの妥当性を考えるのですが、一つ目の解釈だと文全体の述語がなくなることになるので、後者の解釈がよい、ということになります。
ちなみに、「有……者」の形の場合は、「有」の主語はほぼ「……者」全体になります。
このため、訓点の付け方及び書き下し文は、次のようになります。
「能」という字は、「……する能力がある」「……することができる」という意味を表す副詞です。意味的には「べし」と同じ助動詞的なものですが、「よく」という「形容詞の連用形」で読み慣わしています。
次に「無」であるが、用法は「有」とまったく同じです。
この文には「者」がないので、どこまでが主語かは意味上の判断によります。
「従」だけを主語と考えると「王」が浮いてしまうので、「従王」の二文字が主語だとして構いません。この二字は「従う王」「王に従う(こと、もの)」の解釈がありますが、より自然な「左右(側近)には王に従う者はいなかった。」の意味で取っておきましょう。
訓点の付け方及び書き下し文は、次のようになります。
有無を表す表現 …「多」「少」
「有」「無」と同類のものとして、「多」「少」も挙げておきましょう。
「花発」のSV構造の下に、「風雨」が「多」いという構造が並んでいます。せっかく花が開いたというのに、風もよく吹き雨もよく降るので、すぐに散ってしまうという惜別の情を述べたものです。訓点の付け方及び書き下し文は次のようになります。
まとめ
力石智弘先生の著書『脳TEC漢文(ドゥクエスト)』より、返読文字一覧と「有・無・多・少」の例文を抜粋しました。
センターの白文問題に対応する実力を付けられるよう、根本的に理解しておきましょう。
『脳TEC漢文』著者:力石 智弘先生
河合塾、四谷学院など予備校・学習塾で活躍する現役ベテラン国語講師。京大理学部という理系出身こその論理的な解法と多種多様な知識・経験から繰り出される授業は最高傑作と評される。東大模試の作成や、神戸大学個別試験(国語)の解答速報作成(新聞にて掲載)など多岐にわたり活躍中の実力派講師。