【例文付き】漢文において「置き字」とは、訓読するときには読まずに、単に置いてあるように見える文字のことです。主な置き字には「於」「于」「乎」「而」「焉」「矣」の6字があります。本記事では、置き字の一覧に加え、「於」「于」「乎」の意味と読み方と働きについて、大手予備校一流プロ講師が構文レベルから詳しく解説していきます。
目次
置き字「於」「于」「乎」「而」「焉」「矣」の一覧
「於(オ)」「于(ウ)」「乎(コ)」
普通、漢文では上から修飾しますが、下から修飾する修飾語であり、前置詞であり、対象・場所・状況などを示します(英語でいうinやatみたいなもの)。
※直後の語に助詞「ヲ」「ニ」という送り仮名で表現します。漢文の原則として、助詞は送り仮名として表現しなければならないため、置き字自身は読むことが出来ません。
「而(ジ)」
文中に置かれる接続助詞であり、単純接続・順接・逆接を示します。
※直前の語に助詞「テ」や「ドモ」「モ」という送り仮名で表現します。漢文の原則として、助詞は送り仮名として表現しなければならないため、置き字自身は読むことが出来ません。
詳細はコチラを参照⇒置き字の一覧と”而”はこれで完璧
「焉(エン)」「矣(イ)」
文末に置かれ、詠嘆や強意などを表し、語調を強める働きをします。「!」みたいなものです。
詳細はコチラを参照⇒置き字の一覧と”焉・矣”はこれで完璧
置き字「於」「于」「乎」の意味と読み方と働き
「於」「于」「乎」は、漢文の参考書などでは「補語」と呼ばれています。しかし「補語」という用語は、英語の補語の概念とは異なるため誤解を招きかません。
そこでビコラでは「補足説明」という名称で説明しています。
これは、動詞などの述語に対して、その対象・場所・状況などの情報を、後ろから「補足説明」するもので、英語の「後置修飾」にやや近いものとなっています。
漢文では「連体修飾語」(名詞の修飾語)が後置されることはなく、後置されるのは必ず「連用修飾語」(動詞・形容詞・形容動詞の修飾語)です。
特に、「於・乎・于」を用いた「前置詞句」は補足説明として後置されることが多くなっています。
次の例文で考えてみましょう。
「私は鳥が鳴いているのを見ている」という文に、「庭で」という場所の情報が補足説明されていますが、
この「庭で」は「私が見ている場所」なのでしょうか、それとも「鳥が鳴いている場所」なのでしょうか。
もちろん、「於庭」の二字は「鳴」の直後に置かれているので、「鳥が鳴いている場所」です。
つまりこの文は、
○ 私は、鳥が庭で鳴いているのを(どこかで)見ている。
という意味であって、
× 私は、鳥が(どこかで)鳴いているのを庭で見ている。
ではありません。
この二つの解釈は、日本語では「庭で」という修飾語の位置で区別されるので、書き下す時、すなわち、読む順を考える(=返り点をつける)際に注意が必要です。まずはこの口語訳を文語(書き下し文)にしてみましょう。
○ 我鳥の庭に鳴くを見る。
× 我鳥の鳴くを庭に見る。
よって、原文(白文)に訓点をつけると、
となります。助詞は送り仮名で表現しなければならないという漢文の原則に従うと、「庭」に助詞「ニ」という送り仮名をつけて表現しているため、「於」自身は読むことができません。このように、他の字の送り仮名として処理された結果、読まなくなった字のことを置き字といいます。
まとめ
力石智弘先生の著書『脳TEC漢文(ドゥクエスト)』より、
置き字のうち、「於(オ)」「于(ウ)」「乎(コ)」を抜粋しました。
普通、漢文では上から修飾するが、下から修飾する修飾語であり、前置詞であり、対象・場所・状況などを示します(英語でいうinやatみたいなもの)。
※直後の語に助詞「ヲ」「ニ」という送り仮名で表現します。漢文の原則として、助詞は送り仮名として表現しなければならないため、置き字自身は読むことが出来ません。
センターの白文問題に対応する実力を付けられるよう、根本的に理解しておきましょう。
『脳TEC漢文』著者:力石 智弘先生
河合塾、四谷学院など予備校・学習塾で活躍する現役ベテラン国語講師。京大理学部という理系出身こその論理的な解法と多種多様な知識・経験から繰り出される授業は最高傑作と評される。東大模試の作成や、神戸大学個別試験(国語)の解答速報作成(新聞にて掲載)など多岐にわたり活躍中の実力派講師。