特に理系の受験生に多い悩み「効率の良い漢文の勉強法ってどうすればいいの?」「漢文の勉強ってそもそも必要?」「句法ってどうやって覚えるの?」など困っていませんか?センター試験では、白文から書き下し文と口語訳を選ぶ問題が出ます。「句形を覚えたら点数が取れる」という考えでは甘いのが現状です。本記事では9割以上の点数を取るための最短効率な勉強法を紹介します。
目次
漢文の勉強の正しい手順(センター白文問題に対応するには)
「マーク模試が悪かったからセンター試験対策の問題集を買った。」という人がいたら黄信号です。
漢文とは、もともとは中国語の古文です。それをかつての日本人が読みやすいように返り点など工夫したものなので、語順が日本語とは異なります。
センター試験に出題される白文問題に対応するには、この「語順」を身に付けるステップが欠かせません。
- 語順を身に付ける
- 句形を「例文の音読」で覚える
- 読解の練習を行う
繰り返しますが、漢文は、英語と同じくもともと外国語なのです。
英語であれば構文を意識しながら読解するのに、漢文だと返り点と漢字の意味から何となく読めてしまうから「白文問題」などの本質を問う問題が解けないのです。
漢文の語順を身に付け、構造を理解
漢文の語順の基本は英語の語順と同じで、「主語 → 述語 → 目的語・補語」となります。
- 主語S+述語V
- 主語S+述語V+目的語O
- 主語S+述語V+目的語O+目的語O
日本語では、述語Vが最後なので、返り点は述語に返ります。
※漢文では、主語の省略が多いため、述語から始まる場合もあります。
- 漢文にSVOを振る
- 漢文に品詞を振る
- 副詞
述語(動詞・形容詞・形容動詞)などを修飾します。「副詞⇒述語」は返り点をつけません。
- 副詞・助動詞・前置詞
「主語の後、述語の前」に置かれます。
- 助動詞
「べし、べからず、なり」など。漢文では「助動詞 → 述語」の語順です。古文では「述語 →助動詞」と基本的には逆の語順になるので、返読します。
- 前置詞
「於,以,自」など。漢文では「主語⇒前置詞⇒名詞⇒述語」の語順で、「前置詞⇒名詞」の部分を返読します。
句法例文や習う漢文にSVOと品詞を振る訓練をしていくと、漢文の構造が分かるようになり、センター試験や国公立・私立入試で出題される白文問題にも対応できるようになっていきます。
「A 不如 B」で暗記は厳禁。暗記は「例文の音読」で
参考書などによくある
「A 不如 B」のような公式を丸暗記することがそもそも間違い
です。多くの人はこれで失敗します。
その理由は、「試験で応用できる記憶にならないから」です。
そもそも人間の長期記憶には、「意味記憶」「エピソード記憶」「手続き記憶」があります。
- 「意味記憶」とは・・・家族の名前や誕生日、言葉の意味などの単純な知識の記憶
- 「エピソード記憶」とは・・・昨日の夕食のメニュー、週末に出かけた場所など、出来事の記憶
- 「手続き記憶」とは・・・自転車の乗り方やダンスの仕方など体で覚えた記憶
です。
つまり、勉強に置き換えると、
- 「意味記憶」⇒丸暗記
- 「エピソード記憶」⇒論理的な事項(数学の解法など)の暗記や、例文の音読、背景知識、友達同士で教え合ったことなど。
- 「手続き記憶」⇒理解するという行為そのもの
特に高校生以上の人間の記憶は、「意味記憶」は苦手ですし、「意味記憶」は単純な丸暗記なので応用力が生まれません。
「試験で応用できる記憶」にするには、句形自身を語順のルールを含めて“理解”する「手続き記憶」が必要です。「手続き記憶」は原理原則を覚えるようなものなので、応用力が付きます。また、例文を音読しながら覚えることで、「エピソード記憶」となり、覚えやすくなります。
つまり、句形や語順を理解したうえで、例文の音読で覚えることです。
音読は、難解な文章を読解する際には学習効果が下がるという研究結果が出ていますが、平易な文や単語などの記憶に関しては優れており、長期記憶に好影響が出るという研究結果があります。五感を出来る限り使って記憶した方が記憶しやすいということです。
音読しながら「合計4回」句形の復習
とはいえ、脳は忘れやすいものです。
短期記憶から長期記憶へは、脳にとって重要なことから順番に移行します。
「重要」とは何か。
それは第一に生命活動の維持です。
つまり、「生きていくために不可欠かどうか」です。
こうなると「勉強」を記憶に残すことは至難の業です。
繰り返すことで脳に「重要だと錯覚」させるしかありません。
効率的な復習のサイクルは、
学習してから1日後、
そのさらに1週間後、
そのさらに2週間後、
そのさらに1か月後
を目安にすると良いと言われています。
ただし、一度に知識を詰込みすぎると記憶どうしが「干渉」をおこし、記憶の持続性が悪くなりますのでご注意ください。
読解で実戦力を養う。できるだけ楽しむこと!
本番と同じ時間を計って解くことで、スピード感をつけることは必須です。時間が来たら延長禁止。強制終了です。
読解の注意点は、「登場人物が誰かを意識すること、主張を理解すること」です。
間違えた問題はなぜ間違えたのかを確認すること。
解説を熟読し、「抜け」や「漏れ」がないか確認することです。
そして何より出来る限り楽しむこと。
何事も楽しむことで「シータ波」という脳波が出て短期記憶を司る「海馬」が刺激され、いとも簡単に長期記憶に移行します。誰だって好きなものに関することは簡単に覚えられるはずです。(例えば野球好きなら野球選手の名前など)
そして、「シータ波」を出す簡単な方法がもう一つあります。
それは、“歩くこと”です。
散歩しているときは、「シータ波」が海馬から活発に出ており、記憶力や情報の吸収力を高めます。
英単語でも同じことですが、覚えたいときは歩きましょう!!
(ただし、外に出て歩きながら覚えるのは危ないのでやめておきましょう。)
また、時間がある人は背景知識まで付けると、「精緻化」(イメージや既知の知識を加えることでより覚えやすくなる操作)が行われ、より完璧になることでしょう。
また、勉強場所を固定するより、変化を付けた方が記憶の定着率が高まるという研究もあります。
1978年、スティーヴン・スミスとロバート・ビョーク、アーサー・グレンバーグ(ミシガン大学)の研究で、学生2グループに、同じ単語(「ball」や「fork」などの4文字からなる40の単語)を、同じ順番で、同じ時間(10分の学習時間を数時間あけて2回)をかけて覚えさせた。 ただし、グループAは2回とも同じ環境で、グループBは異なる環境が設定された。 3時間後、学生たちに10分の制限時間を与え、覚えた単語をできるだけたくさん思いだして書く課題を与えた。 2回とも同じ部屋で勉強したグループは、40単語のうち平均16個思いだした。 勉強する部屋が変わった学生は、平均24個思いだした。 単純に勉強する場所を変えただけで、思いだす数が40パーセント以上増えた。
現実にはなかなか難しいですね。
ちなみに、「脳TEC漢文」ならこれを踏まえた句形記憶のWebドリルで学習できます。
まとめ
① 語順を理解して身に付ける
② 句形を「例文の音読」で覚える
③ 繰り返し復習する
④ 読解で実戦力を養う
どんなものでも、勉強の始めはとっつきにくいものです。勉強の成果はすぐには現れず、あるとき急激に伸び出すことが脳科学で明らかになっています。あきらめずに継続することが大切です。
そして、今回ご紹介した正しい勉強法に則って、合格を勝ち取りに行ってください。
本記事は力石先生に助言いただき、ViCOLLA Magazine編集部にて執筆しました。
『脳TEC漢文』著者:力石 智弘先生
河合塾、四谷学院など予備校・学習塾で活躍する現役ベテラン国語講師。京大理学部という理系出身こその論理的な解法と多種多様な知識・経験から繰り出される授業は最高傑作と評される。東大模試の作成や、神戸大学個別試験(国語)の解答速報作成(新聞にて掲載)など多岐にわたり活躍中の実力派講師。